組織

福島県民俗学会のこれから
福島県民俗学会 会長 岩崎真幸

 1971(昭和46)年2月に発足した福島県民俗学会は、2021年(令和3年)に創立50年を迎えた。創立当時、福島県内の浜通りには「磐城民俗研究会」、中通り北部には「県北民俗研究会」、会津地方には「会津民俗研究会」があって活発な活動を展開していた。こうした会を牽引していたのが柳田國男の指導を直接受けた、山口弥一郎、岩崎敏夫、和田文夫らであった。また県中や県南地域にも情熱あふれる生え抜きの研究者がいた。

 当時は高度経済成長期を経て、環境や生活そのものが大きく変貌を遂げつつあり、急激な変化に対する言い知れぬ危機感、切迫感が研究者の内面にあり、会を結成する原動力になっていったように思う。民俗の本質的な意味は、変容という動きのなかに透けて見えるものと考えているが、当会の発足は時宜に適った必然的な要請でもあり、その軌跡は機関誌『福島の民俗』(1972年創刊)にみることができる。

 2021(令和3)年は創立50年目に当たる節目の年である。同時に新型コロナウイルスという得体の知れない災禍の2年目、2011(平成23)年に起きた東日本大震災10年目にも当たっている。奇妙な心意を内面に抱えながら、普段とは異なる生活態度を取らざるを得ないこの年この時代は、会発足の時代と重なるところもあり、民俗の本質を炙り出す上で格好の「とき」なのかも知れない。

 岩崎敏夫、和田文夫、大迫徳行、佐々木長生の諸氏のあとを受けて、5代目の会長に就いた。蓄積した今までの成果を次世代に継承する中継ぎ役ではあるが、志は創立時と同じく高くありたいと願っている。会への期待や関心は一人ひとり異なるが、会員各位の思いを達成できるような開かれた場、魅力ある会にしていきたいものである。福島県は広い。多様な手段を活用しながら新たな会運営を試みるのも今後の課題であろう。

 地域学会の活動は停滞しているといわれているが、日本民俗学を支えてきたのは地域の多様な研究者であり組織であった。地域に身を置いて調査研究を志す強みや魅力、その成果を積極的に発信することは、民俗学自体や周辺科学の活性化に寄与することでもある。

2021年7月1日

福島県民俗学会 役員(令和5年度・6年度)

【会長】 岩崎真幸

【副会長】 鑓水実・丹野香須美

【顧問】 田母野公彦 懸田弘訓  

【会計監査】 相原達郎・佐々木長生

【幹事】 村川友彦・二本松文雄・渡邊彩・

【事務局】 佐々木長生